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インド社用車事情│レンタカーとドライバーの実態

さあ今日からインド生活。さて毎日の移動手段は?

インドの地に初めて降り立った時、空港ロビーを出たところで茫然と周囲を見回した覚えがある方は少なくないのではなかろうか。会社の出迎え社員と会うまでの数分間、もしくは誰も来ないかもしれない空港ロビー。雑踏、読めない文字の看板、人、人、人の空港出口、多人種、多言語の世界へたった一人投げ出された迷子のような気分になるのがインドの空港。
そこへあなたの名前の書かれたプラカードを持ち「~様、お待ちしておりました。お荷物お持ちしましょう」と颯爽と現れる、それがインドの社用車ドライバーである。旅慣れていてもこの時の嬉しさと安心感は口では言い表せない。ここではインドで快適に暮らすための大きな要素の一つである、インド社用車事情をお話ししよう。

インドの交通事情と車移動手段

インド主要大都市の道路事情を一言で言い表すとしたら「渋滞、渋滞そしてまた渋滞」。
日本に帰ると反対に驚くのは、渋滞時も隣の車とは距離がある!ということ。インドでは自動車の他にオートリキシャーと呼ばれる3輪バイクに座席と屋根が付いている乗り物、バイク、スクーター、自転車、トラクター、ときどき牛、犬、ロバ、まれに象、山羊など様々な乗り物と生き物が飛び出して来たり、渋滞の中に混在しているため、前後の車間距離もないが、横同士も隙間なくくっついている。
ときどき逆走車両、禁止場所でのUターンなどの違反車両、道路自体に穴ぼこ、雨が降ると湖と化してしまう悪路も多いこともあり、インドでの運転は至難の技と言わざるを得ない。インドに駐在、滞在計画のある方は、長期在住などの特別な計画がない限り、自分で運転するという選択は忘れて欲しい。安全と安心という心の平安を保つために、長期滞在の方はぜひ専任ドライバー付きのレンタカーを長期で雇用することをお勧めする。

車種

日本人駐在員に一般的なのが6人乗りSUVタイプの車種である。
ゆったり座るにはドライバーを除き4人までとした方がいいが、駐在員には必須のスーツケースやゴルフバッグが後方に楽々置けるスペースがあるため、日本からのゲストの送迎も多い駐在員には使い勝手が良い。
駐在員のための社用車の次に、2台目として帯同家族用にはセダン車が一般的である。家族用として奥さんの買い物や会合出席、お子さんの通学、習い事などの外出にちょうどよいサイズと言えよう。

ドライバーとレンタカーを手に入れる

短期利用、例えば一日だけ、またはA地点からB地点までという単純移動の場合は、近所のタクシースタンドから、もしくは携帯アプリからキャブ(タクシー)を簡単に呼べる。ただこの場合、ドライバーや車両の質は保証の限りではなく、ドライバーは現地語のみで簡単な英語さえ通じなかったり、車内は不潔、タバコ臭いなど、日本のタクシーのイメージを思い描いていた方や女性にはストレスだろう。
長期滞在の場合、そんなキャブを毎日呼ぶのはやはり気が重い。上でも述べたが現在一般的なのは、専任ドライバー付きのレンタカーを長期で契約する方法である。日本式に言えば長期契約のハイヤーと呼べるだろう。以前は会社が車を購入、ドライバーを探し雇用するという方法が一般的だったが、車両管理、ドライバーの勤務管理、日々の配車アレンジメント、事故など緊急時の対応、保険や税金の管理など様々な業務がそれにより発生してしまうため、現在は特別なケースを除き、ドライバーとレンタル車両の管理会社に一括して任せるという方法に移行して来ている。企業は駐在員の着任日に合わせ、1ヶ月~2年、3年、4年など駐在期間に応じた契約を、レンタカー会社と結べばよいだけである。

社用車ドライバーの勤務形態

そうして手に入れたあなただけのための車とドライバーは、事前に契約さえしておけば、初めて降り立つインドの空港でも迎えてくれる頼もしい移動のパートナーとなる。
ドライバーは通常週6日、朝は出勤時に車の清掃を済ませ待機、ご主人様の出勤帰宅の送り迎え、夜の外食時も好みのレストランまで送り待機、最後は家の玄関口でご主人様が安全に中へ入る姿を見送り、1日の職務を終了する。日曜日のゴルフにも、車で行ける範囲の小旅行にも、リクエストさえ受ければ休日出勤も厭わず付き従う。基本ドライバー達に長時間勤務や休日出勤は問題ない。残業で遅くなる場合や遠出の予定は事前にわかる範囲で伝えておけば、ドライバーは体調を整える余裕もでき、気持ちよく職務に就けるだろう。限られた空間に二人でいる時間はかなり多い。
ユーザーにとって快適な空間とするには、ドライバーが自己の健康管理ができるよう、お互いのちょっとした気遣いとコミュニケーションが必要だ。それが私達にとっても快適で安全な移動に繋がる。ちなみにドライバーになんらかの問題があれば、派遣元の会社に相談すればドライバー交代も可能だ。

家族車ドライバーの勤務形態

基本的には社用車と同じ週6日、朝の定時出勤は同様である。
しかしインドで「マダム」と呼ばれる駐在員の奥様に付くドライバーの場合は、不規則な待機時間が多い。マダムが朝は出かけず、昼にランチに出かけたり、子供の習い事の送り迎え、夕方の買い物だけに外出したりする。待機はドライバーの職務の一つでもあるので、そのように利用するのは全く問題ないが、こういう不規則な待機の場合は、出かける30分くらい前にドライバーに伝えておくと、ドライバーも食事などを事前に済ませておける。待機時間中の家族車ドライバーは、担当家族の子供たちが外遊びをするのを見守ったり、時には一緒に遊んだりと和気あいあいの関係を築いている者も多い。

ドライバーとの上手な付き合い方

良いドライバーはインド生活には欠かせない存在である。人によっては自分のドライバーが一番身近なインド人、となる事も多い。しかしやはり忘れてはならないことは、彼らは私達にとっては外国人であり、育った環境も、話す言葉も教育も違うということ。日本は違う職業を持っている人々も、出身地が違う人同士でもお互い母語で話せ、教育程度や話題や常識の感覚もそれほど違わず、似たり寄ったりである。話が全くトンチンカンになるということはない。しかしインドの人々はまず話す言語からして千差万別。インド人同士でも出身地が違うと母語では話していないため、誤解が生じる事もある。
ドライバーと私達の共通言語は英語となる。英語は双方にとって母語ではない。
ドライバーの英語も上手くはないかもしれないが、私達日本人もどれだけ立派な英語を話しているのか、相手が癖のあるインド英語だから通じない、とばかり責められない。コミュニケーションギャップが生じるのは当然と受け取り、時間や場所の指示は言葉で伝えるだけでなく、ドライバーの持つ勤務表やノートに書いて伝える習慣をつけるなど、お互いの歩み寄りが大切だと思う。
重複するが、遠出や残業、また出先で昼食をとってよい時間は何時かなど、ドライバーに事前に伝えてあげれば彼らも自分なりに調整し休憩を取り、体調を整え、その分運転中は安全に気を配ることができる。気遣いを見せることで、彼は真摯にあなたのために働くだろう。出先の場合、指示を出してあげないと彼らは昼食も摂らずご主人様の戻りを待っている。ご主人様がいつ戻ってくるか、10分後なのか2時間後なのかわからないからだ。
日本人にとって大切な時間厳守ということや勤務態度には厳しく、普段から親しくなり過ぎずきちんと主従の線を引くことは大切である。しかし同時に移動のパートナーとして思いやりを持って接する。これこそお互いが時間と空間を共有する上で、快適に過ごすコツと言えるだろう。
レンタカーとドライバーを上手に利用して、快適で楽しいインド駐在生活を過ごしていただけたらと願うばかりである。

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